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コロナ騒ぎの春の夜長は2 - ハート

2020/06/05 (Fri) 19:21:20

 「必殺シリーズ」!
(「必殺」はテレビ朝日制作のいわゆる「必殺シリーズ」以外にも、池波章太郎氏の小説を元にしたドラマ、映画、漫画と多々ありますが、ここではテレ朝の「必殺シリーズ」中心にします)

 故藤田まことさんの「ムコ殿!」で有名なあれです。

 ん~、色々語り尽くされているし、自分もそんなに言う程、見てはないんですよね。
 ただ、ほんと昭和の傑作時代劇シリーズですし、ハマる人はとことんハマると思います。
 ネットにもいくらでも情報はあるので、パラパラ思う事を。

 と! その前に、時代劇自体、ダサいと思っている人に。
 こんなエピソードがあります。

 「必殺」の撮影で、ある役者がいかにも時代劇的な演技をしてNGを出した時の監督の注意。

「『必殺』は、現代劇何だよ」
――――――

 またまた、前置きの前置きみたいですが、例えばプロ野球はセリーグとパリーグがある、みたいな、最低限の「必殺」基礎知識。

 wikiで「必殺シリーズ」を検索して「シリーズ一覧」を見て下さい。

 '72年の第一作「必殺仕掛人」に始まって、ジャニーズ仕事人と言われる東山君主演の「仕事人2019」まで、50年近くやってますね。

 とりあえず、藤田まことさん主演の「激突」までを一区切りとしましょう。

 ですが、この昭和「必殺」も、大きく2つに分けられます。
 藤田まことさん演じる中村主水の出る「主水シリーズ」と、主水さんの出ない「非主水シリーズ」という分け方もありますが…。

 '79年の「必殺仕事人」。ここがターニングポイントでした。

 ズバリ言えばそれまでのハードな男性向け路線から、水戸黄門的なマンネリ路線になりました。

 金をもらって許せぬ悪人を殺すという基本的な図式は変わらないんですが、ストーリー、BGM、演出…どこがどうと一言では言えないですが、甘口とビター、ウルトラマンとセブン、ビートルズとストーンズ…やっぱり違います。

 少し面倒な事に、「仕事人」は最初からソフト路線だったわけではなく、むしろ最初はシリーズ屈指のハード路線でしたが、三田村邦彦のアイドル人気やキャスト交代で、ソフト路線に変更され、続く「新必殺仕事人」で、ソフト路線が確定されたようです。

 「必殺」は第二のピークを迎えます。志村けんのパロディコントや「ムコ殿!」と言ったパターンも水戸黄門の印籠の様に広く知られました。

 …ようです、というのはその後も「必殺シリーズ」は続き、時にはハード路線が復活したものもあるようで、この辺で見なくなったので、何とも言えません。

 まあ、見た範囲でパラパラ思う事を。
――――――――

「必殺仕掛人」
 第一作。やっぱりこれ!
 ミスター必殺と言えば、藤田まことさんの中村主水でしょう。
 ですが、存在感、キャラの魅力では緒方拳さんの藤枝梅安も負けていないと思います。

 貧しい人からはお金を取らない善人の針医者。好色。凄腕の殺し屋。

 シリーズの原点たる池波正太郎原作ですが、イメージと違うといって、池波さん、へそを曲げたという…。

 「仕掛人」は、「必殺シリーズ」以外にもドラマ化、漫画化されていますが、梅安のイメージは初老の好好爺みたいな感じだと思います。
 ですが、脂ののった緒方拳が演じた事で時代劇ではありますが、現代的なアクションドラマのムードが出てきました。
 善人で好色で、凄腕の冷徹な殺し屋…凄いキャラクターです。

・続く「必殺仕置人」、続編の「新必殺仕置人」が、「必殺シリーズ」全キャラクターでも人気ベスト5には入る「念仏の鉄」登場で人気が高いですね。
 「新・必殺仕置人」最終回の鉄の壮絶な死に方は語り草です。

・「必殺仕業人」。冒頭のナレーションが宇崎竜童。当時ラップの先駆けみたいに、セリフで曲を作ったダウンタウンブギウギバンドの「港のヨーコ」が大ヒットしてました。

 それ以外にも色々なポイントがあります。
 「必殺」シリーズでムードが一番暗いとも言われます。

 主水さんは前作「必殺仕置屋稼業」のラストで仲間の市松(沖雅也)を逃がした為、奉行所カースト最底辺の牢屋見回り番に降格。

 仕業人仲間の剣之介(中村敦夫)とお歌(中尾ミエ)はお尋ね者夫婦。出てきた時から、ああ、最後は無惨に殺されるんだろうなあ、と思いました。
 中年の粋なプレイボーイの殺し屋、やいと屋又右衛門(大出俊)も面白かった。

 こまかい事ですが、主題歌「さざなみ」も気になります。「必殺」の主題歌は大体、悲しみを歌った演歌、大人の歌が多いんですが、この曲はタカビーな女子高生のけだるいため息みたいな感じです。

 音楽としては、ラストも朝を感じさせる爽やかなBGMをバックに果し合いとシュールでした。

・「翔べ! 必殺うらごろし」。中村主水の出ない「非主水」シリーズの…色々異色過ぎる異色作。

 まず、オカルトを扱っているのが新機軸。

 …で、「エクソシスト」とか「オーメン」とかオカルト、ホラードラマにはよくある話ですが、出演者が次々に怪我や病気になりました。

 「必殺」シリーズで唯一、お金を受け取らないボランティア?殺し屋団体でもあります。

 また、BGMなどトータルな音楽担当が唯一、非平尾昌晃。

 殺し屋トリオは中村敦夫、市原悦子、和田アキ子と豪華です。

 豪華メンバーでも流石必殺。市原さんの最後が壮絶。なます切りにされて絶命でした。いくらドラマの中の話とはいえ、今こんな事出来ますかねー。既に市原悦子と言えば、TVドラマの大女優でしたよ。

 かわいそうと言えば、主役の中村敦夫さん。中村敦夫と言えば、「木枯らし紋次郎」のイメージが強いですが…。
 「必殺」は大ヒットした「木枯らし紋次郎」の対抗策として作られたんですよね。
 で、「必殺」が大ヒットして、結果的に「紋次郎」を終わらせたみたいな形になりました。その主役が「必殺」登場。「格」としては主役ですが…。

 プロレスファンとしてはこんな事を考えます。Aプロレスという団体とBプロレスという団体が激しい興行戦争をしていた。で、Aプロレスが勝って、Bプロレスは潰れてしまった。
 Bプロレスにいた選手は、レスラーとして食っていかなきゃいけないんで、Aプロレスに参戦した。プロレスは選手のヴァリューが重要何で、Bプロレスでエース、人気選手だったレスラーは大体元の格で扱う。ただ、ヤパーリ、前の団体との扱いは微妙に違う。

 …オールドファンには有名ですが、国際プロレスのエースだったラッシャー木村さんの新日での屈辱的な1vs3マッチ。ECWという団体のレイヴェン(好きだった)という屈折した不良キャラの選手は、WWEでは大人になれないヒッキーキャラにされてしまいました。

 中村敦夫さんのカッコ良さは「必殺」でも同じですが「仕業人」では、前述の通り最後はなぶり殺し。「うら殺し」では…殺されはしなかったですが、うわと思ったのは山中を走るシーン。
 役は、神道を修業した「センセイ」。死者とも念を通じ(恨みの声を聞いて殺す)、肉体も凄い運動能力を持っている、という設定ですが…。
 ある回では、山中を相手の乗った馬よりも早く走り、先回りして始末する、というもので、延々山中を走るシーンがありました。
 TVってほんの1シーンの為に長々撮影するんですよねー。これは相当走らされたなー、と思いました。

 「うら殺し」、全部は見てませんが、2、3話見た限りでは、面白かったです。しかし、視聴率は過去最低。余りの不振に、制作側では「必殺」シリーズ打ち切りも考えられたそうです(これで、最後に思い切りハードな「必殺」を作ろうと、次作が「仕事人」)。

・「必殺商売人」。主水シリーズでもマイナーですが、梅宮辰夫、草笛光子と中々の顔ぶれ。主水さんの殺陣は全シリーズで一番ワイルドだそうです。

・「必殺仕舞人」。まだ新人だった本田博太郎さんのやたらつっかえるテンションの高い演技が面白かったです。

 後、キャラで好きだったのは「必殺仕置屋稼業」で新克利さんが演じた生臭坊主の印玄。よくホームドラマに出ていた、人情味のあるガタイのいいお兄さんって感じの人。そういう陽気なキャラで、技は力任せに屋根の上まで連行して突き飛ばすという凄い物でした。

・自分は「仮面ライダー」も好きですが、同じ長寿シリーズ、俳優のリンクなどいくつかの接点もあります。

 「必殺」シリーズを作ったプロデューサー山内久司氏の人気作は「お荷物小荷物」。男やもめの運送屋一家を舞台にした一応はホームドラマでしたが(北方領土問題が絡んだり色々シュール)、仮面ライダー2号、一文字隼人を演じた佐々木剛氏も出ています。

 「必殺シリーズ」には、他に「仮面ライダーV3」を演じた宮内洋氏が「助け人」に、「スカイライダー」の村上弘明氏が「必殺仕事人V」に出ています。

 宮内氏の演じる「島帰りの竜」は、デスバレーボムとかプロレス技みたいなのをバンバン使っていました。

・後期シリーズで一つ上げるなら「必殺剣劇人」でしょうねー。シリーズ終了が決まって、最後に思い切り馬鹿な事をしようと作った怪作です。

・「必殺」は、人気シリーズだけに漫画も出回ってます。有名なのはさいとうたかお氏の「必殺仕掛人」ですが、これはテレ朝の「必殺」とは無関係に、池波正太郎原作の「必殺」ですね。

 TV朝日の「必殺シリーズ」を元にしたのは「必殺仕置長屋」。テレ朝、松竹も絡んでいて本格的です。
 脚本(原作)の山田誠二氏は「必殺」のムードを良くとらえています。主水の親戚という設定の主人公鈴木主膳は、東山紀之君の「渡辺小五郎」キャラに近いです。

 しかし、あっしの大おススメは「必殺!!闇千家死末帖」!

 ハキーリ言って、エロとグロのB級漫画です。しかし、主人公斎藤平五郎を見る為だけにでもこの漫画を読む価値はあります。
 まあ、主水を意識したキャラですが、主水3番目の顔があると思います。

 超人気キャラ中村主水の第一の顔は、せんとりつにいびられる(…エピソードで色々な見方がありますが、私見では主水は二人を愛していると思います)うだつの上がらない小役人でしょう。第二の顔は裏の凄腕の殺し屋。

 第二の顔の延長線として、不敵な大悪党の顔もあると思います。圧倒的な剣の実力からのツワモノの顔。拳銃を向けられても薄笑いを浮かべて「笑わせんじゃねえよ、チンピラが」と吐き捨てる様な…。

 本作は強い、カッコいい「中村主水」が見られます。

・最後に「必殺仕事人2007」に始まる、東山君主演の「ジャニーズ仕事人」と言われるシリーズを考えてみますか。

 あっし的には、というかネットで見たら同意見の人が多いですが、「話やドラマは悪くない、ただ殺し屋を全員ジャニーズで固めたのはまずい」ですね。

 元々ジャニーズやアイドル、イケメン俳優は一人はレギュラーでいました。ただ、全員を固めるとバランス崩壊です。例えば、一人くらい子供の殺し屋がいても面白いと思いますが、ウケたからと言って、全員子供にしたら、もうぶち壊しでしょう。

 …まー、しょーがないか。昭和の前期「必殺」は、男受けするハードな作風でしたが、所詮は数字が全てのTVドラマ。女性向けがもっといい数字が取れたら作風がそっちに変わっただけです。

 …しかし、惜しいなあ。ストーリーとか後期必殺よりは余程「必殺」していたのですが。第10話の池上季実子さんを殺したのは、長い「必殺」シリーズでも珍しい過失ではない非悪人殺しでした(「初の」と書こうとしましたが、某「必殺」の最終回でもそれあった)。

 東山君演じる小五郎のキャラは考えましたねー。最悪なのは主水そのまま、家でも職場でもいびられるパターン。これやったらしょーもない二番煎じです。

 大切にされ過ぎて何か落ち着かない、職場ではそうそう下っ端でもないけど、パッとしない。しまらない坊ちゃん役人という感じですが、裏の顔は主水以上にハードで非情。
 シーズン最終回の盛り上がりは感心しました。

 また、キャストで一番おおっとうなったのは、「2009」の田中聖君! 坊主頭に骨筋張った顔立ち、これは…。
 正業こそ仕立て屋ですが、あの緒方拳の演じた藤枝梅安の若き日を彷彿させないでしょうか。
 …バカな事しなきゃなあ。

 その他、松岡昌宏氏も故沖雅也氏の色気たっぷりのプレイボーイ、市松のイメージに近いです。

 …しかし、全員ジャニーズ。

・野際陽子さんが鬼籍に入られた事もあって、東山君の「必殺」も終了みたいですね。

 「必殺」三度の復活はあるのか…(厳密には昭和必殺とジャニーズ必殺の間に、田原俊彦主演の「必殺始末人」もあり)。

 時代劇(アクションドラマも)が壊滅状態なので難しいですが、仮面ライダー、ウルトラマン、ミステリ、プロレス…自分の好きなものは形は変わり、浮き沈みあってもまたいつか復活する気がします。
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「必殺! オール仕事人vs西洋ショック団、全面戦争」

<概要>
 「必殺」と「仮面ライダー」の夢のコラボ。ショッカーの前身、来日したショック団と日本の仕掛人、仕事人が激突する。

<あらすじ>
 金をもらって晴らせぬ恨みを晴らす、「仕事人」は法が整備されていない江戸時代、日本中全国各地にいた。
 その凄腕の仕事人たちが次々と不可解な変死を遂げた。
 殺ったのは、ヨーロッパから東洋の拠点として、日本征服を企む黒魔術を使う怪人軍団、ショッカーの前身「shock army、ショック団」であった。

 岐阜山中、ショック団から襲われていた侍を見るに見かねて助ける、棺桶の錠。だが、怪人化した相手にはキリが効かない。すんでの所を、旅の途中のやいと屋又右エ門に助けられる。

 浪花からの船を見回る主水。坊主頭の中年の男から異様な殺気を感じた。男もまた。男の名は藤枝梅安。皆殺しにされた呉服屋一家の仇を打ってくれ、との旅であった。

「おめえ、仕掛人だな」「ヘッヘッヘッ、旦那もそうプンプン殺気をふりまいちゃあいけませんや」。ハエ。「ほーらね、ハエも怖がって旦那を避ける。仕掛けってなあ、霧のように静かにやって、跡形もなく消えるもんですぜ」。

 ハエ、ぴたりと梅安の額に張り付いた時、両者、刀のつばに、ハリに手をやるが、狙いは背後の男。主水の刀、梅安の針が同時に腹、額に刺さるが、男は少しうめいただけでなおも襲い掛かる。
 ただものではない、かなわぬとみるや、即座に逃げ去る二人。

 江戸に主水の元に、全国各地から続々と仕事人集結。ある者は仲間を、ある者は家族を殺され、または手足を切り落とされていた。
 話をまとめると、ショック団の怪人には刀、銃さえきかない、仕事人に勝ち目はない。

「いや、一つだけある」

 声を上げたのは蘭学者を親戚に持つ糸井貢(注。いつの頃の「必殺」か、時系列、生死は無視)。「…ショック団と戦おうという西洋人もいる。あいつらと戦う為の西洋帯もある(ライダーベルト)…問題が一つだけ。この帯を一度付けたら、もう二度と人間には戻れない…ウッ」
 貢、既に腹を切られていて絶命。

 行李一杯の人数分はあるベルト。
「オラあ、やるぜっ! この稼業に手を付けた時から死ぬのは覚悟! こんなちっちぇえ娘を殺されて、黙ってられるか!」
「俺も!」「俺もだ!」

「決まりだな」。主水、最後の帯を取る。「てめえは?」

梅安「へっへっへっ、あっしがやらねえわけはねえでしょう。ただ、あっしは人間の仕掛人としてやりてえんだ」

 仮面ライダーに変身してのオール仕事人vs怪人の大決戦。仕事人にもショック団に情報を流した裏切り者あり、変身したものの返り討ちにあう者あり…。

<見せ場>
・念仏の鉄。変身するがあえなく、敵怪人の鉄のとげにやられる。だが、安心して怪人が人間態に戻った刹那、手の影、「新仕置人」のテーマ。振り向いたが、再度怪人に変身する一瞬のすきに、必殺あばらハズシ!

 下っ端の見張りにムリヤリベルトを巻き、蹴飛ばして、殺させたのだ。
「悪いな。おらあ、ケトウの道具は昔から信用できなくてよお」

・「助け人」文十郎、平、清兵衛、「仕事人」竜、秀、勇二、人間態でチームワークで挑むがやはり歯が立たない、間一髪、現れた島帰りの竜、花屋の政。腰にはベルトが!
 V3、スカイライダーに変身!

・寝たきり、廃人同様の巳代松におそるおそるベルトを巻くおてい。植物人間同様だった巳代松が目覚めた。
 粗末な竹鉄砲で挑む巳代松。殺されるその刹那、巳代松の五本の指が銃口に、マシンガンと化した右腕に!

・梅安。罠を張り、急所はあるはず、と一撃に賭けるが、失敗し両腕を切り落とされる。勝ち誇る怪人。

「…あっしゃあねえ、これまで一度だって仕掛けて仕損じたこたあねえんだ」

 拳を切り落された手で足元をすくい倒す梅安。懐から最後の針をくわえ、額の真ん中、急所に刺す! なおも頭突きで血だらけになりながらも芯まで突き刺し、相打ちに持ち込む梅安。
「へっへっへっ、仕掛人をナメちゃあいけねえよ…」怪人の横で絶命。

・下っ端を切り捨て、本陣に向う主水。せんとりつへの置手紙。

「りつよ、せんよ、私はこれから武士として男として、やらねばならぬ仕事の為に遠い旅に出ます。もう会う事はかなわないでしょうが、あなたがたの夫、息子の主水はあなたたち二人を妻として、義理の母上として誰よりもご大切に思っていた事だけは心にとどめておいてください。

 神棚の奥にためていたお金があります。これで、私がいなくなってものんびりとお暮しください。りつ、子供を作れなくて済まない。お前は最高の妻だったよ、ありがとう」

 あちこち切られながら、ラスボスの大怪人にたどり着く主水。
「その体で何ができる」
「てめえを切り刻むにゃあ、ちょうどいいぜ!」
 ベルトを巻く主水。閃光と共に仮面ライダー・モンド登場。「鎧武」の様な、ライダー一号と侍の折衷デザイン。

 死闘の末、ラスボスの刃が主水の腹に、油断した時、主水の肘が刃になり、首を切断!

 大爆破。倒れこむ主水。「ううッ!…こいつに救われたか」。壊れたベルト。主水、人間に復帰。

 這う這うの体で家に帰ると、書置きの遺書を火鉢に投げ込む。
「あなたッ!」「ムコ殿ッ!」

「ミステリ」 - ハート

2020/08/15 (Sat) 18:26:34

 ミステリいっかあ。…の、前にふと思たが、「字だけの本」読んでます? 小説とか。

 別に読まなくても命に別状はないスけど、大槻ケンジによれば、若い頃本を読む習慣がなかった人は一生読まない人になるそーです。

 ま、いっすけど。
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 はいはーい、また、基礎の基礎講座からで~す。自分の世代は「ミステリ」というより、「推理小説」と言ってたなあ。

 「ミステリ」と言えば、「金田一少年」みたいな誰が犯人か当てる「本格推理小説(パズラー)」だけでなく、スリラー、サスペンス、スパイ小説、アクション、ホラー…。まあ、犯罪に関係する小説全般広く含みます。

 で、日本人はミステリ好き。もう大分前だけど、朝日新聞で好きな作家アンケートを取ったら、ベスト10に宮部みゆき、松本清張、東野圭吾とミステリ作家が3人も入ってました。

 ま、大雑把に日本ミステリの流れを言うと、漫画の手塚治虫に相当する戦前(第二次世界大戦)から戦後の「巨人」は江戸川乱歩。
(ミステリの「神」みたいな乱歩さんだけど、実は長編本格推理物は苦手。初期の短編や「変格」と言ってた変な話がうまい)

 当時の大ベストセラー作家であると同時に、海外ミステリの紹介、研究にも努め、本格推理小説以外にも、SF何かも紹介してた。

 でも、戦時中は本格ミステリや犯罪に関係するヤバい小説はNG。

 で、戦後、本格ミステリを書きたかったけど、書けなくてうずうずしていた横溝正史や高木彬光が、金田一耕助シリーズとかでバーン! と爆発すると。

 ミステリ=本格推理小説、の流れが大きく変わったのは'60年頃。松本清張の「点と線」がベストセラーになって、「社会派推理小説」というジャンルが主流になった。

 「本格推理小説」って、パズラーという言い方からもわかるように、小説を使ったパズル、オアソビ。歌の通り殺人が起きたり、密室で謎のメッセージを残して人が死んだり、現実にはありえねーじゃん。

 「社会派推理小説」は、現実的な社会の問題をテーマにリアリズム重視。よく読むと「点と線」何かもアリバイ崩しでかなりトリッキーなんだけどね。

 ミステリの主流は社会派になり、犯人あての本格推理は、現実味のない子供だましだ、みたいな風潮になっていった。

 しかし、'81年、島田荘司「占星術殺人事件」(傑作!)。唖然とするような現実離れした、痛快な犯人あて小説で、乱歩賞は逃したものの、本格推理を愛するミステリ作家、予備軍が次々に本格物を発表し、'90年代、「名探偵コナン」「金田一少年の事件簿」と、少年漫画でも本格物のブームが起き、現在に至ると。

 だから何?

 と、言われても何だけど、以上、まあ最低限の基礎知識みたいなもんで、この位は頭に入れておいた方が、本選びにも役に立ちますよと。

 であ、
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「2つの指標」
 あっしが、面白いのないかな、と参考にするのは「江戸川乱歩賞」と「メフィスト賞」の受賞作。

 「乱歩賞」はその名の通り、江戸川乱歩大先生をしのんで作られた物。日本一権威のある新人の登竜門(当初はミステリの研究や評論に贈られたが、ま、それはこの際スルー)。

 ここから出た作家は東野圭吾、森村誠一、池井戸潤、福井晴敏、桐野夏生…そーそーたる凄い顔ぶれですね。

 も一つ対照的なのが「メフィスト賞」。ここ出身の作家は森博嗣、西尾維新、高里椎名、浦賀和宏、舞城王太郎…。

 「乱歩賞」はオトナが真剣に読むに足るマジメな社会派。「メフィスト賞」は、かなり今風、実験的、アニメ絵が表紙のライトノベルみたいなのも許容する感じ。
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「新本格派」
 ここに具体的な作家が多く載ってますね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E6%A0%BC%E6%B4%BE%E6%8E%A8%E7%90%86%E5%B0%8F%E8%AA%AC#:~:text=%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%81%AE1940%E5%B9%B4%E5%89%8D%E5%BE%8C,%E3%81%93%E3%81%86%E5%91%BC%E3%82%93%E3%81%A0%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%82

 全作家読んだ訳ではないし、作品によって出来不出来もあります。その上で個人的に好きなお勧め作家を。

 「島田荘司」。潔いケレン味で、まずこの人。堂々乱歩賞落選の「占星術殺人事件」から、ドギモを抜かれますよ(容疑者、関係者が30人以上、ワラワラ出てきて、一瞬めげますが、ある一点に気づけばスパッとすべてが分かります)。その後も、頭はワニ、体は人間のピラミッドに書いてある架空の生物、アヌビスが出てきたり(「水晶のピラミッド」)、明治時代に突如北海道の湖にロシアの軍艦が現れたとか(「ロシア幽霊軍艦事件」)、「ミステリには魅力的な謎が必要」という持論通り、あっと驚くトリックを仕掛けます。

 「綾辻行人」。これでもか、と言わんばかりに、吹雪の山荘(吹雪で外に出られない館で次々殺人事件というパターン)とか、色々やってくれます。「館」シリーズは傑作。

 「二階堂黎人」。新本格派のアイアンメイデン(爆)。ロックでヘビーメタルってジャンルがあって、まあハードロック何ですが、泣きのメロディに、悪魔とか地獄の何とかとか、横溝正史のおどろおどろしい推理小説みたいに、大げさ何ですよ。
 アイアンメイデンって、それをもっとオリジナルより極端にやったバンドですが、それに近い。デビュー作から「地獄の奇術師」ですからね。
 もう、ドロドロの渦巻く因縁。凄いです。圧巻は「人狼城の恐怖」。講談社ノベルスで事典位の暑さで全4巻かなあ。世界最長の本格ミステリに挑戦したそうで、二つの国を舞台に凄かったです。
 多少コンパクトなのは「悪霊の館」…オイ。

「篠田真由美」建築探偵、って古今東西の建物に詳しい変なキャラクターですが、読んでみたら、横溝正史の様な因縁、因果ドロドロの古風な味わいで面白かったです。

「歌野晶午」
 傑作「葉桜」で驚いて下さい、と言えばそれでいい気もしますが…。

 あっし、ただ作品を読むだけじゃなく、よく作者の事とか想像しますが、この人のデビューからの「家」シリーズ3部作。もー凄い。ただ、謎があってトリックがあって種明かしがあるだけ。
 本格ミステリは謎解きだ、パズルだ、と言っても、そこはエンターティメントだから、ギャグとかスリルとか変人の探偵とか色々サービスがあるじゃないですか。全くなし!

 こう、小説を一度も読んだ事のない人が、本格推理小説を一作か二つ三つだけ読んで、こういうものかと書いた感じ。
 ほんとにこの人、あまり小説を読んだ事がなくて、たまたま島田荘司を読んでミステリを書いたそうです。
 これで作家になろうとは無謀ですが、まー、その後勉強して苦労したんだろうなあ、と思うサービス精神たっぷりの傑作をガンガン書いて人気作家になりました。
 代表作は各賞を取った「葉桜の季節に君を想うということ」。それ以外も面白いです。

「折原一」個人的には一番好きなミステリ作家です。また、バンドの比喩でいえば、ミステリ界のAC/DC、「ワン・アンド・オーリー」。

 叙述ミステリってパターンがあって、「シャーロックホームズ」シリーズは、ワトソンとか、事件や探偵の関係者が話を書いたり語ったりしていますが、オーリーのミステリはほぼ全部それです。
 書いてる人が犯人何てのは序の口で、またその裏の裏の裏をかいて、もうわけがわからず楽しいです。
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 「新」ではない、昭和やそれ以前の本格推理は横溝正史、高木彬光当たりから行きましょう。
 ただ、パソコンはともかく、小型パソコンとも言える携帯電話をほぼ全国民が持ってる現在とは、特に情報や通信の面では今とは生活様式がかなり変わったんですよね。
 極端に言えば、明治や大正の小説を読む位のズレがあるかも知れません。

 まあ、「新本格」以前で、好きなのは紹介するまでもない巨匠ですが、松本清張。
 変なベタベタしたサービスはないですが、人間や社会の矛盾や愚かしさ、悲しさを淡々と丁寧に描いていて、ちゃんと読めば凄く面白いです。

 ミステリのほかに歴史小説やエッセイ、評論も相当書いているんですが、お勧めは「ある『小倉日記』伝」等の初期の短編、アリバイ崩しでベストセラーになった「点と線」、「目の壁」当たりでしょうか。
(…実話を元にした「ある『小倉日記』伝」は、涙なしには読めない名作ですが、フィクション部分が興味深いです…フフフ)
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 よりマニアな領域では、「探偵小説」とか言われた戦前のミステリも面白いしハマる人はハマると思います。
 怪しいレトロの世界というか、それこそ明治、大正エログロの不思議な魅力があります。

 入手しやすく、一般性もあって面白いのはやはり、大家江戸川乱歩でしょう。乱歩先生はそれこそ手塚治虫、ビートルズ並みの大物ですが、この時代には甲賀三郎、夢野久作、小栗虫太郎とほかにも濃厚な作家が多数います。
 ただ、夏目漱石や芥川龍之介ぐらいの作家ならともかく、今も読まれてはいますが、いつでも簡単に文庫ではありません。
 ハードカバーを問い合わせるか、文庫もあるかないかですが、時々「探偵小説」のアンソロジーとか出るし、図書館でも。
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 海外物は…。

 う~ん、最近てか、'80年からこっちの新しめのミステリは余り読んでないし、こっちが教えて欲しいです。
 英米では謎解きがメインの「本格ミステリ」は壊滅状態だそうですね。ただ、本格物でなくとも、あちらはエンタメ王国で、更に翻訳されるのはセレクトされたものばかりだから、極論を言えば、日本の水準から言えば、目をつぶってどれを読んでもある程度は面白いです。

 もうシャーロックホームズみたいな古典に属するでしょうが、お勧めものを。

エラリークイーン「エジプト十字架の謎」。国産品は横溝正史の「八つ墓村」にハマりましたが、洋物はこれ。トリックというか、犯人を当てる「最後の一手」にやられました。最後はカーチェースもあってサービス満点です。あ、よく「ミステリベスト10」に入る「Yの悲劇」は、大ネタが「英語」に関するもので、チョト一般日本人にはつらいかなと。
 クイーンは初期から中期はトリックに凝ったパズル的作風でしたが、後期は心理面に重点を置いた「九尾の猫」など読みごたえがあります。

「ブラウン神父」シリーズ。シャーロックホームズのライバルは? ルパンという気もしますが(1作だけ共演)、軽妙な短編主体という点では、このブラウン神父でしょう。創元推理文庫にあったんですが、もう絶版かなー。

「迷宮課事件簿」。お宮入りになった事件をしぶとく、ボチボチあらう迷宮課。本当にそんなセクションがあるのか知りませんが、ふとした事で謎がとける奇妙な味わいの「コロンボ」という感じです。

「マルタの鷹」「長いお別れ」…。ハードボイルドです。じっくり読むにはいいもんです。短編の傑作は、ヘミングウェイの「殺人者」。

 国産品の最大お勧めは藤原伊織「テロリストのパラソル」。これ一作で乱歩賞と直木賞を一遍に取ったから凄い。
 ハードボイルドって、探偵がキザな事言うだけじゃなく、結構難しいです。悲しいとか嬉しいとか、文章でも態度でも中々言わない、表に出さないから、堅ゆで(ハードボイルド)卵みたいなハードな奴だ、と。で、調査していく内に、単純そうな家出やトラブルがどんどん複雑になってくるんですが、「テロリスト」ほど読みやすいハードボイルドは初めてでした。

 ついでに言えば、作者の(故)藤原伊織さんは東大出て電通に入ったエリートさんですが、凄いギャンブル狂で持ち家も借金で取られ、返済の為に「テロリスト」を書いたそうです(乱歩賞は賞金一千万)。豪快さんだなあ。
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「2大異端の巨匠、森博嗣、京極夏彦、…」
 森博嗣と京極夏彦は、あえてジャンル分けすれば、「新本格」に入るんでしょうが…もう、それぞれ「森博嗣」、「京極夏彦」って、一人だけの「ジャンル」ですねえ。両者そのぐらい、強烈に個性的です。

 ミステリは好き何ですが、突き詰めれば結局「本格」と「サスペンス(スリル)」だなあ、と思ってました(社会派も、謎解きと現実的なサスペンス)。

 ところがこの二人は、かたやファンタジックとも言える理系的ロジック(森博嗣)、かたや民俗学、宗教学をも動員しての土着的、民族的展開と、ベクトルは違いますが、ほんと飛躍的にミステリの可能性を広げました。

 森博嗣はデビュー作「すべてがFになる」以来、全作品読んだ訳じゃないですが、事件のない普通小説もエッセイも大体同じ感触の作品を書いてます。
(最近の話題作はアニメ化された「スカイ・クロラ」)

 京極夏彦はミステリとしてはやはりデビュー作の「姑獲鳥の夏」から。パロディ、ユーモア小説みたいなのも書いてて、少し作風がばらけてます。
(ミステリではないですが「嗤う伊右衛門」良かた。映画にもなった、あのお岩さん「四谷怪談」の新解釈。秘められた愛の物語を現代最高の戯作者が今こそ解き明かす、という感じ)

 ちなみに森博嗣の「すべてがFになる」は第1回メフィスト賞受賞作ですが、「メフィスト賞」って、京極夏彦の「姑獲鳥」を出した講談社がそういう斬新なミステリを求めて設立したそうです。

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 もう二人。海堂尊「チームバチスタの栄光」。メディカル(医療)ミステリです。とにかく面白かった。

 松岡圭祐「催眠術」「千里眼」シリーズ。本格ミステリじゃなく、ジャンルとしてスリラー、アクションかなあ。

 「千里眼」何か格闘から戦闘機操縦まで出来るスーパー心理カウンセラーが、世界征服を企む悪の組織と戦うという、仮面ライダーか007みたいな話ですよ。
 しかし、面白い! おまけにこの人、前職が「催眠術師」って凄すぎる ^^)。

 泡坂妻夫って、元手品師というミステリ作家もいましたけど。
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 まあ、最初に書きましたが、日本はミステリ大国です。ファンも多いですが、作家も多い。まだ、面白い作家や作品も山ほどあると思うんで、後は自力でお探し下さい。

 …宮部みゆき、東野圭吾についても言えば、好みですが、宮部さんはどーも発想や視点が女性的というか、どこか家庭的でこじんまりとしている気がします。
 その辺が逆に本好きの女性に受けてるんじゃないでしょうか。

 あ、今宮部みゆきで、乃南アサを思い出した。ミーナって言ってますが、乃南アサは好きです。
 これまた「本格」ではなく、スリラー、サスペンスですが、丁寧な職人の仕事、って気がします。

 東野圭吾さん。「容疑者Xの献身」は驚きました。ただ、いくつか読んで、大体面白いですが、強い個性がないなあと。この人が作家になろうと決めた小峰元って、乱歩賞作家の人は、またムチャクチャ個性的な作風なんですけどね。
 「容疑者X」はその、クセのない作家のイメージ自体が、まさか、この作家がそんなことをするわけがないという、ミスディレクションではと ^^)。

補遺、ホラー、特撮 - ハート

2020/08/18 (Tue) 21:21:02

 コロナ騒ぎもまだ長引きそうですが、ひとまずこれで切りましょう。まだ、ネタはスカとかパチンコとかあるじょー。

 ただ、いくつかつけたしとか、言い足りない事を。

<ホラー>
・夢枕獏「陰陽師」シリーズ。映画にもなって有名ですが、案外読んでない人も多いのでは、と。

 一応怪異を扱っているからホラーに入れましたが、「生き屏風」に近いほっこりしたユーモア小説に近いです。ゲラゲラ笑うというより、平安時代ののんびりした妖怪退治というムードがいいです。

 しかし、夢枕獏って、ハードアクション物で鳴らしたんですが、鉱脈を見つけたなあ。

「ど根性ガエルの娘」
 webでやっと完結しました。ここで全部読めます。

https://manga-park.com/

 前にも紹介しましたが、昭和40年頃かな、漫画、アニメで大ヒットした「ど根性ガエル」の作者、吉沢やすみの実の娘(漫画家)が描く、吉沢一家の話です。

 これ、エンターティメントとしての「ホラー」じゃなく、実話ノンフィクション何ですが、例えば実際の事件を扱った松本清張のノンフィクション「ミステリの系譜」が、実話の持つ迫真の怖さがあるように、この本も相当怖いです。

 「ど根性ガエル」は大ヒットしたものの、吉沢氏はその後ヒットに恵まれず、ギャンブル中毒もあってDVで…。
 まあ、この辺は良くある話ですが、この漫画が凄いのはDVの生々しい「連鎖」が描いてある事です。

 この娘さんも漫画家になって、同じく漫画、アニメ関係の人と結婚するんですが、この旦那さんも暴れる人何ですよね~。そして、文字だけで絵で描いてはいませんが、作者も、時にはひどい言葉の暴力を夫にぶつけていたそうです。

 この漫画が怖いのは、普通どんな化け物や狂気を描いた物でも、一人だけ正常な人がいて、それは「作者」。作者だけは、冷静で正しい神の視点で作品を書いていくわけですが、この本は作者の視点自体が少しふらついていて、不安になります。

 時系列もバラバラで、1話1話はまあ完結しているんですが、それも描ける事を思い出し思い出し描いたという感じ。
 作品というより、DV家庭に生まれ育った女性のドキュメンタリーですね。

 ほんと、メンタルが弱い人は読まない方がいいです。

<特撮>
「アイアンキング」
 まだ、面白いのもいくらでもあるでしょうが、とりあえずこれ!
 大まかなストーリーは、日本征服を企む特殊な民族が遂に決起して巨大ロボットを操り暴れるのを、秘密警察みたいな組織の隊員とウルトラマンみたいなアイアンキングに変身出来るあんちゃんの二人が旅しながら戦うと。

 特筆すべきは旅しながら戦う「ロードムービー」スタイル!

 いいよねえ。子供の頃、こういうあてのない「旅」に憧れませんでした? サラリーマンが家と会社を往復する毎日にうんざりしてるみたいに、子供も家と学校の毎日に飽きてるんだよねえ。
 平成ライダーの白倉プロデューサーもロードムービーを作るのが夢だそう(「仮面ライダー555」の前半はそれ)。

 主演は当時凄い人気だった青春スターの石橋正次と、三枚目的な浜田光夫。バディ物の要素もあるな。
 ウルトラマンに似てて(今見たらウルトラのNGデザインみたいだけど)TBSでやってたから、円谷プロ制作と思ってたけど、宣弘社。もっとも、円谷プロ出身のスタッフもいて、演出とか特撮とか似てる。

 宣弘社はその前に「シルバー仮面」という同じく特撮ヒーロー物を作っているが、これまた少々複雑なストーリーでまた見てみたい。

平成ライダーを作った2大プロデューサー、高寺成紀と白倉伸一郎 - ハート

2020/08/29 (Sat) 17:51:33

 ちょっとマニアックな話になりますが、これは書いておきたい。

 映画やTVドラマは誰が作るのか?…もっと端的に「誰の」作品と言えるのか、ドラマの世界は誰が作るのか。

 映画やドラマは「集団芸術」とも言われていて、誰とは言いづらいんだけど、プロデューサーが大きい。
 「監督」と思ってる人も多いけど、建築工事でいえば、監督はその名の通り「現場監督」。実際に現場でセットを指定したり、役者の芝居をチェックして、ちゃんと脚本(設計図に相当)通りにドラマを作る人。
 プロデューサーは、現場に行く事もあるけど、それ以前にドラマを企画して、予算を組んで(スポンサーを獲得して)、監督やスタッフを決めて、制作現場より包括的に広く作品を作る人、みたいな感じかな。
 …これもケース・バイ・ケースで一概には言えないんですけど。監督も、このストーリーはおかしいとかいう事もあるし、役者はそのキャラクターがその人の担当みたいだから、このセリフはおかしいとか言う事もある。
 スポンサーもこんな暗い話ではお金は出せない、とか言う事もある。

 それでも、プロデューサーはとりあえずの「代表」と考えていい。その位、高寺氏と白倉氏の作品は極端に二人の個性や思想がはっきりと出ています。

 高寺氏プロデュース「仮面ライダークゥガ」「仮面ライダー響鬼(前半)」「
大魔神カノン」、他「激走戦隊カーレンジャー」等。

 白倉氏プロデュース「仮面ライダーアギト」「仮面ライダー龍騎」「仮面ライダー555」…、「超光戦士シャンゼリオン」「鳥人戦隊ジェットマン」等。

 白倉氏からいこう。いー加減なC調探偵がふとした事で変身ヒーローになる「シャンゼリオン」、スーパー戦隊内で三角関係が起きる「ジェットマン」、13人のライダーが殺し合いをする「仮面ライダー龍騎」…。

 もうこれだけで、オーソドックスなヒーロー像に批判的、懐疑的な発想が見える。

 高寺氏は、スーパー戦隊物、「ポワトリン」「ナイルなトトメス」等、不思議コメディーシリーズも手掛けているが、シリアスな作品を考えてみたい。

 「仮面ライダークゥガ」「仮面ライダー響鬼(前半)」「大魔神カノン」と見れば、はっきりと高寺氏の世界はわかります。

 「クゥガ」と「アギト」。事件が起きて、警察が絡むのは同じです。

 ところが、「クゥガ」の警察の人は大体常識人、いい人で、「アギト」はいきなりやたらプライドが高く高飛車な北条透とか出てくるんですよねー。G3チームのリーダー小沢澄子もスッゲエ、ツンツンした、イヤ~な女です。

 結論から簡単に言えば、高寺氏のドラマ世界は「いい人」ばかり出てくる性善説の世界、です。

 勿論、全員が全員「いい人」ばかり出てきては、悪を倒すヒーロードラマにならないんで、少しは悪い人、悪いキャラも出てきます。

 ですが、「クウガ」は、殺人や悪い事をするのはまず「グロンギ」という、人類の一種ではありますが、怪物に変身出来る異端の一族です。
 ゲームとして平気で何人も無差別殺人をする様な奴らですから、この連中には流石に話し合いの余地もなく、クウガ、伍代は戦います。

 いい人ばかりの「クウガ」でも多少はトラブルは起きます。グロンギ事件に関係した外国人の研究者が、つい殺人の悲劇よりもグロンギの謎に興味を持って面白がったら、殺された大学教授の娘が傷つき不快感を持ちます。すぐにその外国人は反省し、二人の仲は元に戻ります。
 また、幼稚園児が些細な事でケンカします。同時に、グロンギの無差別殺人も起こり、園児はケンカした後、反省しまた仲直りします。グロンギは分かり合えないが、人間は話し合えば分かり合える、というメッセージが明らかですね。

 まだあります。絵が認められず、多少デスぺレートになったイラストレイター志望の青年が、勝負をかけたイラストの応募にクウガの戦いのせいで間に合わず、俺はグロンギに憧れるね、と言います。この青年も、すぐ反省するんですよね。

 そういうものでしょうか。園児はトラブった後、すぐに言葉で分かり合えますが、現実にはそういかない事も多々あるのではないでしょうか。
 子供を対象にしたドラマだから、こう言う展開は許容されるかも知れませんが、もっと露骨な悪い形で「いい人ばかりの世界」が展開された事もあります。

 「大魔神カノン」はもう少し上の層を対象にしたドラマですが、モンスターペアレントが出た回がありました。娘に有無を言わせずピアノをやらせて、人の言う事は聞かない母親です。娘は多少抗いますが、もうすっかり諦めて、母の言うなりです。
 着地点は? 2話でこの親子、外国に行って「退場」するんですよね…。「カノン」というドラマにあっては、些細な1エピソードですから、それでいいのかも知れませんが…。
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 白倉さんの作風を考えてみましょう。「アギト」の高飛車、傲慢な北条透、小沢澄子何か序の口。「555」の演奏出来なくなってヤケになった天才ギタリスト海堂直也や愛を求めて自分を受け入れない人間には攻撃的に当たる草加雅人とか、もう性格的に問題のある人の集まりです。
 しまいには「龍騎」の仮面ライダー王蛇に変身する浅倉威何か、イラつくんだよ! それだけで周りの人を平気で鉄パイプやナイフで殺すサイコパスですからね。こういう人を仮面ライダーにするんですから。

 昭和の昔の特撮ドラマ「ウルトラマン」や「仮面ライダー」でも、発明好きのイデ隊員とかガンガンジイとか、多少個性的なキャラはいましたが、多くは「ユニーク」という言葉で収まる個性でした。

 人間は話せばわかりあえるはず、という高寺氏の哲学と、世の中は色んな人がいてもめるもの、分かり合えなくてもいい、という白倉氏の哲学のどっちが正しいか。

 はっきり言えば、自分個人は白倉氏支持です。ただ、子供を対象にしたドラマには道徳教育の様な面もあり、高寺氏の考えも一概には否定出来ない。
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 一見特撮ヒーロードラマとしては、正統派の様な高寺氏の哲学は、最終的には逆に「特撮ヒーロードラマ」自体を否定します。
 なぜなら、「特撮ヒーロードラマ」とは勧善懲悪の表の顔とは別に、カッコよく悪を「やっつける」、子供向けの暴力ショーでもあるからです。
 仮面ライダーやウルトラマンのエンターティメントとしてのアクションと現実の生々しい暴力は違いますが、しかし突き詰めればそうです。

 高寺氏は突き詰めます。「クウガ」のラストバトルは、グロンギのラスボスとの一騎打ちですが、共に最終形態になった両者は、互いの最終バトル属性、能力が相殺され、人間態で戦います。相手の人間態は高校生位の少年でした。
 戦い、殺戮を本能的に好むグロンギは笑いながら、殴り合い、クウガ、伍代雄介は勝利します。実質、少年を撲殺したのも同じです。

 「カノン」も人間の心の歪みが作った妖怪イバダダは手が付けられない位強大化し、遂に大魔神カノンが立ち上がるのですが、このラストもおよそ特撮ヒーローものとは思えないバトルのないエンディングでした。
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 こういう対比はどうでしょう。話せばわかる、という高寺氏の哲学は幼い未成熟な少年の発想ではなく、人間社会の分かり合えなさを十分に味わったオトナの願いでは、と。

 白倉氏の、世の中色んな人がいるんだ、分かり合えなくても突き進むんだ、という哲学は人間社会の矛盾に傷ついたりしながらも前進する若者の発想では、と。

 「仮面ライダーアギト」は、人間と神の戦いを描いたストーリーですが、壮大すぎて直接的なメッセージは余り見当たりません。

 ですが、あえてここからメッセージをくみ取るなら、まず終盤のベルトと同時にアギトの能力が奪われても、白い「神」を殴る主人公津上翔一。
 たとえ、相手が神であっても許せないものには立ち向かえ、と。

 もう一つ。仮面ライダーアギトに変身する津上翔一は、事故で記憶を失うのですが、ヒーローらしからぬ普段はひょうひょうとして、料理や家事、家庭菜園が好きな草食系男子です。
 このキャラクターについて津上翔一を演じた賀集利樹はこう語っています。

「強い人だな、と。記憶喪失になっても、料理とか好きな自分を貫いて…」

 繰り返しますが、「仮面ライダーアギト」は神と人間の戦いを描いた壮大な(現実離れした)SFですが、その戦いに巻き込まれ運命に翻弄される津上翔一や芦原涼(仮面ライダーギルス)の行動、生き様からは、普遍的なメッセージを感じます。

「変化を恐れるな、なぜなら君は何も変わる必要はないのだから。周りがどう変わろうと君は君自身であればいい」と。

 これは社会に旅立つ若者への熱く暖かいメッセージではないでしょうか。

 高寺氏のドラマ哲学は、大人から子供への願い、白倉氏のドラマ哲学は一歩先に社会に出た若者から、次に社会に旅立つ若者へのメッセージとも言えますね。
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 「仮面ライダー響鬼」は、設定や前半を高寺氏が手掛け、後半を白倉氏が手掛けた異例の作品です。

 和風のライダー世界、という一見風変わりな設定ですが、高寺氏の世界を知っている人ならうなづける展開です。

 人間を襲い害をなす「魔化魍」はまたしても人間とは別種の妖怪です。古来からひそかに「鬼(仮面ライダー)」に変身して人々を守る「鬼」やそのサポートメンバー「猛士」の人たちはまたしてもいい人ばかりです。

 「響鬼」には二人の主人公がいます。一人は、「響鬼」に変身する「ヒビキ」。ソフトな、絶対に声を荒立てない優しい中年男性です。

 もう一人は高校生の安達明日夢。母子家庭に育った、喧嘩なんかしない優しい男の子です。ふとした事でヒビキと知り合い、優しくも勇敢に魔化魍と戦う姿に憧れ、「鬼」になる為にヒビキに弟子入りします(この世界では、修行して「鬼(仮面ライダー)」になる)。

 鬼(仮面ライダー)と魔化魍の戦いが延々続き、白倉プロデューサーに交替し、話は急展開します。

 ・それまで楽勝だった、魔化魍との戦いが一挙に厳しくなり最終決戦になる。

 ・高寺氏の世界では、絶対に(少なくともレギュラーでは)出ないイヤな奴、桐谷京介というキャラクターが登場し、明日夢のライバルのようにヒビキに弟子入りする。

 この変化についてファンの間では賛否両論ですが、個人的には本質的に「響鬼」の世界は変わらなかったと思います。相変わらず「猛士」の人達は優しく、明日夢君はおとなしい男の子です。

 最終決戦も終えた最終回。病気と闘う少女を見た明日夢は医者になる事を決意します。
 海辺で、ヒビキに、僕は「鬼」にはなりません、と告げます。

「それでいい…お前は初めて会った時から、俺の一番弟子だった。これからも俺のそばでずっと修行しろ」

 一見矛盾していますが、製作者のメッセージは明らかです。安達明日夢とは何か。仮面ライダーに憧れながら、ただ仮面ライダーを見ている明日夢とは、ライダーファンなのです。
 ライダーはこう言ってるんです。

「君は仮面ライダーにはなれない。仮面ライダーは架空の作り物だから。でも、仮面ライダーから卒業することはない。ずっと、ライダーを心に抱いて、最高の君になれ、それが一番仮面ライダーに近づけるんだ」と。

 「仮面ライダー響鬼」とは、平成ライダーを作った、真逆の思想を持つ二大プロデューサー、高寺成紀と白倉伸一郎の一度きりの「合作」だと思います。
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 追記。「9・11」自爆テロが提起した、命を選べるのか、仲間の死を止めるためにほかの人の命を奪って悪いのか、弱者は座してただ死を待て、というのか、という問題を真っ向から取り上げた「仮面ライダー龍騎」。

 答えようのない難問ですが、「龍騎」で白倉氏が提示したこのテーマは、その後の「ライダー」でも何度か扱われます。
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 高寺氏はカナーリの凝り性の模様。「クウガ」では、画面に映らない洞窟の遺跡のセットを作り、「響鬼」では、屋久島の山中でヒビキが戦い明日夢と会うシーン。

 山の中何て東京の高尾山でもいいのに、ほんとにスタッフ一同連れて屋久島でロケ。「空気感が違う!」
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 白倉プロデューサーの作品に、よく変人が登場するのは脚本の井上敏樹氏のセンスもありそうです。
 この辺、どこまでが脚本家のアイディアかわかりませんが、まあ、OKを出したのは当然白倉氏なわけで。

 で、井上氏、どんな人か興味深かったんですが(白倉氏は、現在東映の重役、特撮物のスポークスマンとしてよくインタビューなどに登場)、「アギト」の配信動画(対談)で遂にお顔を拝見させていただきました。

 う~ん ^^) 、流石、氷川透や小沢澄子、海道尚也を創造し、「ジェットマン」を書いた男。

 作家では吉行淳之介、俳優では岩城滉一に似てたなあ、痩せててまあいい男何ですが、いかにもニヤニヤして皮肉屋みたいな。
 余りにもイメージ通りで苦笑しました。

(余談。白倉氏はもう20年前のインタビューでは、レスラーの金本みたいな、まあいい男だけど、キップが良すぎてすぐ切れそうな若い大工さんみたい。「龍騎」とかバリバリとがった作品を作っていた頃でしょうね。今は、笑顔が優しいナイスミドルです)
(ついでに、氷川透を演じた山崎潤氏。顔はまあ、そのまんまですが、冗談ですが「おう!」とかいきなり怒鳴って、荒い人だなあと ^^。役者で食えない時、大工さんやってたの納得でした)

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